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森鴎外「堺事件」を読む

2008年1月4日(金) 快晴
 永井荷風は『鴎外全集を読む』で、「文学者になろうと思ったら大学などに入る必要はない。鴎外全集と辞書の言海とを毎日時間をきめて三四年繰り返して読めばいいと思っております」と書いている。(『永井荷風ひとりぐらしの贅沢』永井永光・水野恵美子・坂本真典・新潮社)そこで、森鴎外の作品を毎日時間を決めて読んでみようと思う。初めに大正三年執筆「堺事件」(『新潮社・日本文学全集5・森鴎外集』)を読んだ。幕末の混乱期、無政府状態になった大阪・堺で起きたフランス軍人殺傷事件の顛末を著した作品である。殺傷したのは当時堺の治安部隊であった土佐藩士であるが、事後の外交交渉により二十名が死刑に処せられることになった。鴎外は、その経緯を「淡々と」(私情を交えずに)書き綴る。中でも、二十名が次々と死刑に処せられていく(切腹していく)場面は圧巻である。「箕浦(注・土佐藩士)は衣服をくつろげ、短刀を逆手に取って、左の枠腹へ深く突き立て、三寸切り下げ、右へ引き廻して、又三寸切り上げた。刃が深く入ったので、傷口は廣く開いた。箕輪は短刀を捨てて、右手を創に挿し込んで、大網を掴んで引き出しつつ、フランス人を睨み付けた。馬場(注・介錯人)が刀を抜いて項を一刀切ったが、浅かった。箕浦は又大声を放って『馬場君。どうした。静かに遣れ』と、箕浦が叫んだ。馬場の二の太刀は頸椎を断って、かっと音がした。『まだ死なんぞ、もっと切れ』と叫んだ。此声は今までより大きく、三丁位響いたのである。初めから箕浦の挙動を見ていたフランス公使は、次第に驚がいと畏怖とに襲われた。そして座席に安んぜなくなっていたのに、この意外に大きい声を、意外な時に聞いた公使は、とうとう立ち上がって、手足の措所に迷った。馬場は三度目にようよう箕浦の首を墜した。」このようにして切腹者が十二人目になっ時、フランス公使はたまらず席を立つ。同時に処刑(切腹)は中止となり、残り九人は延命するという話である。なるほど、「講釈師、見てきたような嘘を言い」という言葉があるが、鴎外の筆致は「その場に居たような」臨場感に溢れている。フランス公使が居たたまれなくなった心情が、私にはよくわかった。
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(2000/10/10)
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